近年の国内中小中堅企業のM&Aニーズの高まりを受けて、急速に規模を拡大させているM&A仲介会社各社。
東証プライム市場に上場している、日本M&Aセンター・M&Aキャピタルパートナーズ・ストライクの大手3社はもちろん、近年新規上場する会社も増えており、ますますM&Aコンサルタントの採用市場は激化していきそうです。
筆者が元々M&A仲介会社に勤務していた経験に基づいて、残業をはじめとした働き方について考察していきます。
M&A仲介会社の働き方は、一言でいうと自由です。
もちろん、自由が故のメリットもあれば、デメリットもあるので細かくみていきましょう。
目次
M&A業界はブラックなのか
高年収と激務、アップオアアウトのイメージが強いM&A業界ですが、実際にM&A仲介会社で勤務していた筆者からすると、社会のイメージとは異なる部分も多いと考えています。
確かに、楽な仕事ではないので、転職するときにはそれなりの覚悟は必要であると思いますが、転職後は自由闊達な就業環境と圧倒的なやりがいが待っており、年収も一般的な企業と比較して高く設定されています。
高年収のカラクリは、給与体系が固定給+インセンティブ(一般的なイメージでは歩合給)で構成されていることが理由として挙げられます。
つまり、社員は頑張れば頑張った分だけ年収が上がることになり、大きな成果を出せた人は高年収となります。
会社によって違いますが、手数料で5,000万円の案件を1人で成約させた場合、1,000万円ほどのインセンディブが支払われます。
不動産や保険業界でも同じような風習はありますが、M&A業界の場合は比較的ベースの固定給が高いことと、自身の成果に占めるインセンティブの割合が高いことが違いとして挙げられるでしょう。
上記で手数料で5,000万円となる案件を例に挙げましたが、この案件のような高インセンティブの案件は決して珍しいものではありません。
つまり標準的な規模の案件(誰もが担当できる案件)を手がけるだけですぐに年収1,000万円プレイヤーとなれるのです。
ブラック企業というのは、低賃金で長時間労働させられる企業の総称だと思いますので、M&A仲介会社はブラック企業とは全く異なります。
M&A業界がハードで残業が多いと思われている要因
仕事がハードで残業が多いイメージのあるM&A業界ですが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは、業界経験者である筆者が、M&A業界がハードで残業が多いと思われている原因について、以下の4つの項目に分けて解説します。
- 業務量が多い
- 案件が長期に渡る
- 実力主義・成果主義である
- 学び続ける必要がある
業務量が多い
M&A業界がハードで残業が多いと思われている原因の1つに、業務量の多さが挙げられるでしょう。
M&Aの完了までに必要なプロセスや業務は多岐にわたり、専門性の高い業務も含まれています。
M&A業界の平均残業時間は80~90時間で、繁忙期には月200時間を超えることもあり、一時的ではありますが激務になってしまうこともあります。
とはいえ、企業によっては働き方改革に取り組み、長時間労働の改善に努めているケースも増えてきました。
リサーチや分析など、膨大な業務量をこなすためには一定の労働時間が必要ですが、プロジェクトの終了後はまとめて休みを取得することもあるため、常に激務なのではなく、業務量に波があると言った方が正しい表現になります。
通常、M&Aアドバイザーは2~3名のチームで案件に取り組み、社内での分業制や外部委託、アライアンス提携などにより業務を分担しています。
初回訪問から成約までの間に、企業価値評価・相手先選定・企業概要書作成・契約書作成・デューデリジェンス対応など、多くのプロセスが存在し、全ての業務をこなすにはどうしても時間を要してしまいます。
これらの業務の中でも、とくにデューデリジェンスに関しては1ヶ月程度の時間を要するため、物理的に残業時間が増える傾向があります。
M&A業界は平均年収が高く、実績次第では数千万円から数億円の報酬を得ることができるため、他業界と比較して忙しいと言えます。
ただし、業務量には波があり、私生活がまったくないというほどの激務ではないことも事実なので、その点はご安心ください。
案件が長期に渡る
M&A業界がハードで残業が多いと思われている原因には、1つの案件が長期間に渡ることも挙げられます。
M&Aの依頼を受けてから完了するまでの期間は、通常8ヶ月から1年ほどかかり、案件や規模によっては1ヶ月で終わることもあります。
また、条件を満たす企業が見つからない場合や交渉が難航すれば2~3年かかることもあり、その間も常に案件をサポートし続けなければなりません。
M&Aの基本的なプロセスとしては、交渉相手の選択・秘密保持契約の締結・情報開示・スキーム選定・企業価値算定・交渉・基本合意書の締結・デューデリジェンスの実施・最終交渉・最終契約書の締結・クロージング・PMIと、多数の工程を踏みます。
各工程の遂行にはそれぞれ一定の期間が必要であり、M&Aを完了するには基本的に1年前後を要してしまいます。
案件に取り組んでいる最中は常に気が抜けないため、想像以上に体力・精神力を要する仕事だと言えるでしょう。
実力主義・成果主義である
実力主義・成果主義であることも、M&A業界がハードで残業が多いと思われている原因です。
M&A仲介の仕事は完全な実力主義・成果主義であり、年齢・職歴は関係なく、結果を出した人が高く評価される世界です。
そのため、M&A業界はインセンティブの割合が非常に高く、結果を出せばそれだけ得られる収入も多くなりますが、逆に結果を出せなければ基本給のみで評価もされないというのが実情です。
頑張っていても結果が出なければ評価されないため、がむしゃらに仕事をして激務になっている人も少なくないため、その点もM&A業界が激務に見える原因かもしれません。
ただし、高いモチベーションと目標を持ち、自発的に働いている人が多いことも事実ですので、会社から仕事を強制されるようなブラック企業とは質的に異なっていると言えるでしょう。
M&A業界では、1つの案件の成約に応じて追加報酬が支払われ、1件当たりの金額も大きいのが特徴です。
年に2~3件成約すれば年収が1,000万円を超えるような設計になっていることが多く、成果に応じて数千万円から1億円以上の年収になることもあります。
そのため、若いうちから自身の実力で高収入を狙いたい方にとっては、働き甲斐のある業界でもあります。
学び続ける必要がある
M&A業界がハードで残業が多いと思われている原因には、常に学び続ける必要があることも挙げられます。
M&A業務は専門性が高く、経営のトップクラスがクライアントであることが多いため、経済情勢やM&A業界のトレンドを最新の状態に保ち、信頼関係を構築できるように努めなければなりません。
また、ある程度の経験を積んでも、案件ごとに企業のビジネスモデルや業界理解が必要となり、とくに経営者への営業では、業界に精通した経営者と同等の知識が要求されます。
万が一、初回訪問の段階で十分な知識がない場合、経営者の信頼を失い機会損失につながってしまうため、通常の業務と並行し、案件に必要な情報をインプットし続ける必要があります。
加えて、M&Aの世界は法改正の影響も受けるため、常に高いアンテナを張って情報収集し、経済状況・業界動向に合わせて知識をアップデートし続けなければなりません。
この継続的な学習の必要性が、M&A業界に激務のイメージをもたらしていると言えるでしょう。
M&A業界は実際、残業が多くて定時に帰れない?
M&Aの仕事は、手がけている案件のフェイズによって残業しないと手が回らない時もあると思います。
しかし、案件が進んでいるからこそ、仕事が増え残業をしないといけないということになりますので、ネガティブな残業ではなく、案件を成約させるために必要な残業というポジティブな状況でもあります。
従って、実際に働いているものからすると、そこまでストレスにはならない場合も多々あると現場を経験している筆者は実感しています。
ただ、『絶対に定時に帰りたい』というような考え方の方には馴染まない働き方なので、転職先の選択肢にはしない方がよいかもしれません。
M&A業界の働き方は激務でブラック労働?
M&A業界は高収入・激務といったイメージが先行していますが、元々働くことが好きな方が転職し、自由闊達に働いているため、外から見るとそのように見えるのかもしれません。
手元の案件を成約させるために残業しよう、顧客のために朝早く起きてメールを済ませてしまおうなど、あくまでも自発的な長時間労働であるため、必ずしも辛いと感じているとは限らないものです。
逆に、案件が成約した日や交渉がうまくいった日には早く帰って飲みにいったり旅行をすることも可能で、『夜遅くまで働く日』『今日は定時で上がる日』を自身の裁量で決めることもできます。
近年、働き方改革で残業は厳しく規制されていますが、もっと働いて高い評価や年収を得たいと思うビジネスパーソンにはもってこいの業界と言えるでしょう。
M&A業界の経験者が語る1日のスケジュール
M&Aコンサルタントの1日のスケジュールは、普通の時期と繁忙期で大きく異なります。
一例として、M&Aコンサルタントの普通の時期の1日のスケジュールと繁忙期の1日のスケジュールを比較してみましょう。
M&Aコンサルタントの普通の時期の1日のスケジュールは、以下のような流れになることが多くなります。
・9:00 出社
・9:00~12:00 顧客との面談、もしくは面談のための準備
・12:00~13:00 同僚とランチ
・13:00~14:00 顧客との面談
・14:00~17:00 資料作成等の事務作業
・19:00 退社
普通の時期(閑散期)の場合、M&Aコンサルタントは9:00に出勤し19:00前後に退社するスケジュールが一般的です。
労働時間は約9時間で、一般的なフルタイム労働の8時間と比べると、およそ1時間の残業となります。
日中は主に顧客との面談や案件提案に必要なコールドコール、顧客折衝などに時間を充て、ランチは同僚とオフィス近辺のお店に足を運んだり、時間があれば徒歩圏内で少し遠出してランチを取ることもあります。
全体的に、一般的な企業の稼働スケジュールと大きな違いはありません。
次に、M&Aコンサルタントの繁忙期の1日のスケジュールを見ていきます。
・7:30 出社
・7:30~10:00 各種対応業務(オフィス)
・10:00~12:00 顧客との面談
・12:00~13:00 各種対応業務(オフィス)
・13:00~15:00 顧客との面談
・15:00~20:00 各種対応業務
・20:00~23:00 残務処理
案件が佳境に入り、繁忙期に突入すると、M&Aコンサルタントの労働時間は大幅に増加します。
繁忙期の場合、7:30に出勤し20:00~23:00まで仕事をすることが多く、退社時間はPM0:00近くになることもあります。
労働時間は12時間~15時間に及び、一般的なフルタイム労働の8時間と比べると、およそ4時間~7時間の残業となります。
とくに中途入社で1・2年目の社員の場合、慣れていない部分が多いため、各種対応・調整などの業務に時間がかかってしまう傾向があります。
また、デューデリジェンスの対応などは土日を使って行われることもあり、普通の時期と比べて稼働時間が著しく増え、スケジュールはハードになると言えるでしょう。
M&A業界の平均残業時間は?
M&A業界は一般的に激務で残業時間が長いと認識されがちですが、実際の残業時間は会社や部署によって大きく異なります。
一般的にM&A業界の平均残業時間は月40時間程度ですが、複数案件を抱えると80~90時間、繁忙期には200時間を超えることもあります。
残業が多くなる理由としては、リサーチや企業価値評価、デューデリジェンスなど多数の業務があり、長時間労働を強いられる傾向にあるためです。
加えて、報酬体系がインセンティブ制であるため、高収入を望む者は残業を苦にせず働くといった、社員のモチベーションの高さも影響していると言えるでしょう。
一方で、M&A仲介・アドバイザリー業務を行う株式会社ストライクなどのように、平均10時間前後と少ない残業時間の会社も存在するため、一律でM&A業界が長時間労働であるとは言えません。
また、M&A業界の忙しさには波があり、閑散期には残業は少なくなり、プロジェクト終了後は一斉に休暇を取れるなど、通年で残業時間が多いわけではありません。
その上でM&A業界では、自身の裁量で労働時間を調整できる側面もあるため、月の残業の総量=ハードワークの単純な図式は成立しないことにも留意が必要です。
上場会社と未上場会社での働き方の違い
M&Aは半年から1年間で成約していくため、『売上が立つまでに時間がかかるビジネス』です。
しかし、上場しているM&A仲介会社は、決算も3ヶ月ごとに行わなければならないため、会社は短期的な3ヶ月という短い期間で成果を求められ、開示しなければなりません。
会社はプロジェクトの期間が長いものを短期的なスパンで情報開示することが求められるため、スケジュールの管理や期末への押し込みなど、決算月はバタバタとします。
上場会社はブランドがあり営業活動でも有利ですが、決算の開示が忙しないといったデメリットもあると言えます。
一方で未上場会社は、対外的な開示義務はないため、その点では落ち着いて仕事ができると言えるでしょう。
M&A業界の残業時間は会社・部署・案件・時期によって異なる
M&A業界は高収入・激務というイメージが先行していますが、実際の残業時間や働き方は会社・部署・案件によって大きく異なります。
また、M&A業界の報酬体系はインセンティブ制であるため、高収入を望む社員は自発的に残業をして働く傾向にあり、外から見るとハードワークに感じられる可能性もあります。
一方で、M&A業界の忙しさには波があり、閑散期は残業は少なく、案件終了後はまとめて休暇を取得できるなど、必ずしも通年で長時間労働というわけではありません。
加えて、M&Aの仕事は実力主義・成果主義の側面が強く、自身の裁量で働き方を調整できる自由もあるため、一概に残業時間の長さ=ブラック労働とは言えない側面もあります。
M&A業界で働く魅力は、高い年収を得られることに加え、規模の大きな案件に携われたり、自身の専門性を活かして企業の課題解決に貢献できる点にあります。
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