M&A業界は、激務で離職率が高いイメージがあるかもしれませんが、実際のデータを見ると意外な事実が見えてきます。
また、M&A業界で長期的に働いている人の特徴についても、気になるところでしょう。
そこで今回は、M&A業界の離職率の実態・離職率が高いと誤解される原因・M&A業界の離職理由などについて詳しく解説しています。
加えて、M&A業界で長期的に働いている人の特徴もお伝えしますので、M&A業界への就職・転職を考えている方はぜひ参考にしてくださいね。
目次
M&A業界は実は他の業界より離職率が低い
離職率が高いイメージのあるM&A業界ですが、実際は他の業界と比べて離職率が低くなっています。
基準として、厚生労働省が発表している『令和4年 雇用動向調査結果の概要』に記述された、日本の平均離職率15%と比べてみると、離職率の低さがわかります。
例えば、M&A総合研究所のアドバイザーの離職率は、2021年度から2023年度にかけて9~11%と低水準で推移しており、日本の平均離職率15%よりも低いことがわかります。
日本M&Aセンターの過去4年間の離職率は11.2%~15.1%で、こちらも日本の平均離職率より低い傾向があると言えそうです。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社に至っては、直近5年間の離職率がわずか5%程度となっているため、離職率が高いイメージとかけ離れた実情が伺えるでしょう。
M&A業界では、3~5年程度で次のキャリアへ移行する傾向があるようですが、それでも他業界と比較した場合、離職率は総じて低いことがわかります。
M&A業界の離職率が低い理由は?
では、どうしてM&A業界の離職率は低いのでしょうか。
ここでは、『年収が高い』『キャリアパスが豊富』の2つの項目に分け、M&A業界の離職率が低い理由について解説します。
年収が高い
M&A業界の離職率が低い理由の1つに、年収の高さが挙げられます。
M&A業界では、多くの企業がインセンティブ制度を採用しており、成果を出せば出すほど高い報酬を得ることができます。
そのため、大手M&A仲介会社では年収1,000万円以上を目指すことも可能で、インセンティブを含めると時給15,000円以上になることもあります。
加えて、M&A業界では実力次第で早期の昇級も可能なため、社歴が浅い若手や中途入社に関わらず、成果を出していれば誰でも役職に就くことができる構造になっています。
また、業界全体のニーズの高さもM&A業界の年収が高い要因になっています。
M&Aのニーズは、経営者の高齢化や後継者不足を理由に年々増加傾向にあり、向こう数年は後継者問題が続くと予想されているため、さらに高まると言えるでしょう。
併せて、M&Aで働く人材の重要性も高まるため、給与を含めた待遇の面でも好条件になっていくことが予想されます。
キャリアパスが豊富
M&A業界の離職率が低い理由には、キャリアパスの豊富であることも関係しています。
M&A業界では、仕事の延長線上に転職や引き抜きの機会が訪れるため、キャリアアップが容易になっています。
実際、M&Aコンサルタントなどは様々な会社の役員と仕事をする機会が多く、ファンドやコンサルティング会社、事業会社などから直接オファーが来ることも珍しくありません。
また、M&A業界の経験者は転職市場でも高く評価されており、M&A業界での経験は将来のキャリアにおいても大きな財産になります。
金融機関・投資銀行・コンサルティングファーム・企業の経営企画部門など、キャリアパスの選択肢が豊富で待遇も良いことから、離職率が低くなっていると考えられます。
M&A業界の離職率が誤解される原因は?
M&A業界の離職率は、その他の業界・企業と比較して高くないことはお伝えしましたが、ではなぜ離職率が高いイメージがあるのでしょうか。
ここでは、M&A業界の離職率が高いと誤解されてしまう原因について、『激務のイメージがある』『M&Aが成長段階の業界であるため』の2つの項目に分け解説します。
激務のイメージがある
M&A業界の離職率が高いと誤解される原因の1つに、激務のイメージがあることが挙げられます。
案件中は、クライアントの利益を最大化するためにリサーチや分析作業に追われるため、残業が多くなる傾向にあることは間違いありません。
ただ、M&A業界の平均残業時間は30~50時間程度で、多くても80~100時間ほどなので、他業界と比べると忙しいものの、私生活がなくなるほどの激務ではないと言えそうです。
加えて、近年では労働環境の改善に取り組むM&A仲介会社も多く、リモートワークの導入や働き方改革により、ライフワークバランスを重視する企業も増えています。
また、非上場のM&A仲介会社などでは、時期によって定時退社も可能な場合もあるため、一概にM&A業界が激務だとは言えないでしょう。
イメージほど過酷な労働環境ではないことを理解することで、離職率の低さにも納得できるのではないでしょうか。
M&Aが成長段階の業界であるため
M&Aのニーズが高まり、M&A業界全体が成長段階に入っていることも、M&A業界の離職率が高いと誤解されている原因の1つです。
業界が成長段階に入ると、社員の平均勤続年数が短くなってしまう傾向にあり、その数字だけを見て離職率が高いと思われてしまうためです。
例えば、日本M&Aセンターの平均勤続年数は3.5年、M&Aキャピタルパートナーズは2.9年、ストライクは2.5年と、いずれも3年前後と短くなっており、一見するとかなり離職率が高い業界のように思えます。
ですが、業界が成長段階の場合、業務量が増えたりマネジメントの課題などにより一時的に平均勤続年数が短くなってしまう場合もあるため、単純な平均勤続年数の数字だけで離職率を判断することはできません。
大手M&A仲介会社の平均勤続年数については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
M&A業界の離職理由
M&A業界の離職率が高くないことはお伝えしましたが、とはいえ離職する人がいることも事実です。
そこでここでは、M&A業界で働く人がどういった理由で離職するのかについて、以下の3つの項目に分けて解説します。
- 業務量が多く長時間労働になりがちだから
- 成果主義のプレッシャー
- 業務内容が適正に合わない
業務量が多く長時間労働になりがちだから
M&A業界で社員が離職する理由の1つに、業務量の多さと長時間労働が挙げられます。
M&Aの仕事では、戦略策定・スキーム構築・ロングリスト作成・交渉・契約・PMIなど作業内容は多岐にわたり、どの工程も相応の作業量と時間を必要とします。
加えて、M&Aではお客様ファーストの精神が求められ、クライアントからの要望により休日や時間外の出勤が発生することもあります。
M&A業界の平均残業時間は80~90時間で、繁忙期には200時間を超えることもあるため、業務量の多さと長時間労働がM&A業界で社員が離職する理由の1つになっています。
成果主義のプレッシャー
M&A業界で社員が離職する理由には、成果主義のプレッシャーが原因になっていることも挙げられます。
M&A業界では、多くの会社がインセンティブ制度を採用しており、成果を出さなければならないというプレッシャーが常にあります。
M&A業界の大手では、年収1,000万円以上を目指すこともできますが、インセンティブを得るためには高い成約数が求められます。
インセンティブのために多くの案件を請け負ったり、成約難易度の高い案件を受託し、肉体的・精神的に厳しい状況に追い込まれてしまれいるケースもあります。
当然ですが、案件数が増えすぎるとプライベートな時間を仕事に充てざるを得なくなり、成果を上げてインセンティブが得られなければ割に合わないと感じてしまいます。
また、M&Aの場合、1つの案件の成約に1年前後を要するため、その間は常にプレッシャーに晒されることは避けられません。
以上のように、M&A業界特有の成果主義によるプレッシャーが離職者を出している理由の1つになります。
業務内容が適正に合わない
M&A業界で社員が離職する理由には、業務内容が適性に合わないことも挙げられます。
業務内容が適性に合わないと感じるパターンには、次の3つがあります。
- 同じことを繰り返す業務が合わない
- ライフワークバランスを重視しすぎる
- コミュニケーションが苦手
それぞれについて解説します。
同じことを繰り返す業務が合わない
M&Aを遂行するための各フェイズは基本的にマニュアル通りに進み、創意工夫の余地がほとんどありません。
買い手・売り手候補の探索、NDA締結、初期情報送付、意向表明書のやり取り、デューデリジェンス、最終合意など、同じ作業を案件ごとに繰り返すことが基本です。
クライアントや業界が異なっても、M&A仲介会社が行う作業は全く同じなため、初めは新鮮だと感じても、次第に合わないと感じるようになってしまう場合があります。
ライフワークバランスを重視しすぎる
M&Aでは、クライアントと共に案件を進めるため、クライアントと伴走する働き方が求められます。
慣れてくればコントロールできる部分も増えますが、とくに初めの段階では経営者などクライアントと足並みを揃える必要があるため、スケジュールを調整しなければなりません。
そのため、ライフワークバランスを重視する人は業務内容が合わないと感じ、離職してしまう可能性があります。
コミュニケーションが苦手
M&Aは1人で完走できる仕事ではなく、同僚・部署・専門家などと連携しながら案件を進める必要があります。
とくに案件の規模が大きくなるほど、弁護士・会計士・業界に詳しいコンサルタントなど、専門家に協力してもらいながら進めなければなりません。
コミュニケーションが苦手な人の場合、クライアントとの関係性の構築、専門家への協力の依頼、必要な根回しなどの人間関係を軸としたやり取りに弊害が出てしまいます。
そのため、業務内容が適正に合わないと感じ、離職を選択するケースもあります。
M&A業界で長期的に働いている人の特徴
M&A業界にも、ベテランプレイヤーと呼ばれる人が存在します。
業務量が多く、成果主義のシビアな業界で、長く働いている人にはどのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、M&A業界で長期的に働いている人の特徴について、以下の4つの項目に分けて解説します。
- 向上心がある
- コミュニケーション能力が高い
- 自己管理能力・マネジメント能力がある
- 身体・メンタルが強い
向上心がある
M&A業界で長期的に働いている人の特徴の1つに、向上心があることが挙げられます。
M&A業界では、クライアントごとの経営方針を理解し、買い手・売り手企業の業態・業種・規模に合わせてM&Aに関連する法案を考慮し、案件を進めなければなりません。
そのためには、業界・法案などの知識をアップデートし、能動的に情報収集を行う姿勢が必要なため、向上心があり、成長と変化を意識してる人が、長期的に働いている傾向にあります。
また、M&A業界において、成長意欲は欠かせない人材要件であり、採用の領域でも理想の人物像とされています。
現状で幅広く深い知識・経験がなくても、自身で積極的に学ぶ意思のある人材であれば、M&A業界では成長が期待できる人材として評価されやすくなります。
M&Aで重要な市場の動向を敏感に感じ取るためにも、向上心があり、成長意欲を持っていることが大切だと考えられています。
コミュニケーション能力が高い
コミュニケーション能力が高いことも、M&A業界で長期的に働いている人の特徴です。
クライアントの発信する言葉から意図を正確に汲み取り、適切な返答や提案ができる力が必要だからです。
M&Aはセンシティブな事項であるため、クライアントは最初からハッキリと意見・要望を伝えてくれないケースも多々あります。
その中で、発言に含まれる数少ないキーワードからクライアントの考えを拾い上げ、確認し、M&Aの遂行の方針・方法に反映しなければなりません。
また、コミュニケーション能力には、買い手・売り手双方の企業の経営陣や社員との距離を詰めることも含まれています。
社内でのコミュニケーションも重要で、普段から同僚・上司などと親しい関係を構築しておき、困った時にすぐに相談できる環境であるかがM&Aを遂行する上で大切です。
さらに、社内で慕われている人物は、経営者にも信用されやすい傾向があるため、人間的な魅力を高めるという意味でも、コミュニケーション能力は欠かせません。
自己管理能力・マネジメント能力がある
M&A業界で長期的に働いている人の特徴には、高度な自己管理能力・マネジメント能力を有していることも挙げられます。
業務量の波が激しく、突発的な仕事が入りやすいM&A業界で長く働くには、オンオフ切り分けやメリハリを持って働けるよう自己管理することが必要になります。
業界全体の風潮として、上司が有給取得を積極的に促すことは少なく、案件終了後は自主的に有給を取得する必要があるなど、個人の裁量が大きいためです。
ライフワークバランスを考えて行動しないと疲れ・ストレスが蓄積してしまうため、M&A業界には自己管理が得意な人が向いている傾向があります。
また、M&Aの案件は、成立までに数ヶ月から1年以上の期間を要するため、目標達成に向けて計画的に行動しなければなりません。
M&Aは複数部門が同時進行するプロジェクトであるため、進捗管理・スケジュール管理・ステークホルダー間の折衝・リスクヘッジなど、PMO的なマネジメント能力も必要になります。
身体・メンタルが強い
身体・メンタルの強いことも、M&A業界で長期的に働いている人の特徴です。
M&Aの仕事は激務であることが多く、出張やイレギュラーな業務対応も多いものです。
外資系投資銀行(IB)では、毎日3時間睡眠で土日も仕事という過酷なスケジュールで働くこともあり、『ブティック』や『FAS』でも、佳境の時は夜中まで仕事することがあります。
そこまでではなくとも、案件が重なって長時間労働になったり、成果を出すため常にプレッシャーがかかる状況が長期間続くなど、身体・メンタルの両方の強さが必要になることは多々あります。
そのため、身体・メンタルも強い人が向いており、気力・体力・精神力が充実していることがM&A業界で働く上で大切になります。
M&A業界の離職率は他の業界・一般的な企業より低い!
M&A業界の離職率は、実は他の業界や一般的な企業より低くなっています。
M&A業界の離職率の低い理由には、年収の高さやキャリアパスの豊富さが関係しており、 待遇に魅力を感じて働いている人も多いようです。
M&A業界で長期的に働いている人の特徴を見ると、向上心・コミュニケーション能力の高さをはじめ、自己管理能力・マネジメント能力、身体とメンタルの強さなどの特徴があります。
M&A業界は離職率は低いですが、継続して働くためには、一定の適性と資質が求められる業界であると言えるでしょう。
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