「M&A仲介の仕事に、特別な資格や免許はいらない」——M&A業界を調べ始めた就活生の多くが、一度はこの説明を目にします。しかし「本当に無資格のままでいいのか?」と疑問に感じた方も多いはずです。
その状況がいま、大きく変わろうとしています。中小企業庁は令和8年度(2026年度)に「中小M&A資格試験」を創設する方針を打ち出し、2026年に入って制度設計と運営事業者の公募が本格化しました。M&A仲介という仕事に、初めて公的な資格制度が生まれようとしているのです。
この記事では、M&A業界特化の転職・就活エージェント「キャリアラダー」が、中小企業庁の一次資料(中小M&A市場改革プラン、検討会資料、企画競争募集要領など)をもとに、新しい資格試験の制度概要を正確に解説します。さらに、M&A仲介・M&Aアドバイザリーを志望する就活生・若手転職者にとって、この制度創設が何を意味するかまで踏み込みます。
この記事でわかること
- なぜいまM&A仲介に資格制度が必要とされているのか(背景)
- 「中小M&A資格試験」の科目・形式・合格基準・登録制度
- これは国家資格なのか、既存のM&A関連資格と何が違うのか
- M&A業界を志望する就活生・若手転職者は受験すべきか
※本記事は2026年5月時点で公表されている情報をもとにしています。制度は検討・準備の段階にあり、科目数・試験日程・受験料などの詳細は今後変更される可能性があります。受験を具体的に検討する際は、必ず中小企業庁の最新発表をご確認ください。
目次
- なぜいまM&A仲介に「資格制度」が必要なのか|創設の背景
- 「中小M&A資格試験」とは|制度の全体像【2026年5月時点】
- 試験の内容|科目・形式・合格基準
- 合格して終わりではない|合格者登録制度と継続的な規律
- M&A支援機関登録制度との関係|「組織 × 個人」の二層構造
- これは「国家資格」なのか|位置づけと制度の課題
- 既存のM&A関連資格との違い|新資格の位置づけ
- 資格制度の誕生はM&Aキャリアに何を意味するか|就活生・若手向け
- 今後のスケジュールと未確定の論点
- まとめ|M&A仲介の「資格制度」時代に備える
- 中小M&A資格試験に関するよくある質問(FAQ)
- 参考リンク・出典
- M&A業界への就職・転職ならキャリアラダーへ
なぜいまM&A仲介に「資格制度」が必要なのか|創設の背景
新しい資格試験の中身に入る前に、まず「なぜこの制度が生まれるのか」という背景を理解しておきましょう。背景を知ることは、就活の面接でこのトピックを語るうえでも重要です。
M&A仲介はこれまで「資格・免許が不要」だった
意外に思われるかもしれませんが、M&A仲介やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の業務そのものに、法律上の資格や免許は必要ありません。不動産取引における宅地建物取引士のような必須資格が、M&A仲介には存在しないのです。公認会計士・税理士・弁護士といった専門家でなくても、M&A仲介会社で経営者の事業承継を支援する業務に従事できます。
この「参入のしやすさ」は、急増する事業承継ニーズに対応するM&A支援者を短期間で増やすうえでプラスに働いてきました。一方で、知識や実務能力にばらつきのある担当者が市場に多数参入する要因にもなっていました。
急増するトラブル|高額手数料・専門性不足・「悪質な買い手」問題
中小企業のM&A市場が拡大するにつれ、支援の質をめぐるトラブルが表面化してきました。代表的なものとして、次のような問題が指摘されています。
- 高額な手数料:一般的な相場や根拠が不透明なまま、過大な手数料を請求される
- 専門性を欠く助言:知識不足の担当者による不適切なアドバイスで、経営者が不利益を被る
- 「悪質な買い手」問題:買収後に対象企業の現預金を引き出し、経営者保証だけが売り手に残るといった事例
こうした問題のあるケースは、譲渡を考える経営者に深刻な損害を与えるだけでなく、M&A仲介という仕事全体の信頼を損ないます。実際に、不適切な支援を行った仲介事業者がM&A支援機関の登録を取り消される事例も発生しており、業界の健全性が問われる状況になっていました。
「支援の質」を担保する制度改革へ
こうした課題を受け、中小企業庁は中小M&A市場の健全な発展に向けた制度改革を進めてきました。2025年(令和7年)8月に公表された「中小M&A市場改革プラン」では、市場の透明性と支援の質を高めるための施策が示され、その柱のひとつとしてM&A支援者個人の知識・実務能力・倫理を担保する資格試験の創設が位置づけられました。
制度整備のねらいは明確です。問題のある支援者を市場から排除し、トラブルを防止することで、M&A仲介という仕事への信頼性を高める。さまざまな業種の中小企業が安心してM&Aを選べる環境をつくる。資格制度の必要性と、それによる支援の質の向上は、いまや業界全体の共通課題となっています。
つまり今回の資格制度は、思いつきで生まれたものではなく、中小M&A市場の構造的な課題を解決するための一連の制度改革の中に明確に組み込まれているということです。M&A仲介業界の役割や仕組みそのものを整理して理解したい方は、M&A仲介協会の役割とルールもあわせてご覧ください。
「中小M&A資格試験」とは|制度の全体像【2026年5月時点】
ここからは、新しい資格試験の全体像を整理します。
中小企業庁が創設する”公的な資格試験”
新制度は、中小企業庁が創設する中小M&A支援者向けの資格試験です。試験の名称は現時点で「中小M&A資格試験」(仮称)とされ、「中小M&Aアドバイザー試験」と呼ばれることもあります。正式名称は、運営を担う事業者の選定などを経て最終的に決まる見込みです。
制度の目的は明確で、M&A支援に従事する個人の知識・実務能力・倫理観を試験で確認し、合格者を登録・公表することで、中小M&A市場全体の支援の質を底上げすることにあります。経営者が「この担当者は一定の知識と倫理を備えている」と確認できる、ひとつの証明として機能させる狙いです。
創設は令和8年度(2026年度)|検討から公募までの経緯
制度化に向けた動きは、次のように進んできました。
- 令和7年(2025年)5月〜令和8年(2026年)3月:中小企業庁が「中小M&A市場の改革に向けた検討会」を開催(全4回)。資格試験の設計が議論される
- 令和7年(2025年)6月:政府方針として資格制度の創設が閣議決定で明記される
- 令和7年(2025年)8月:「中小M&A市場改革プラン」公表。資格試験の創設が改革の柱に位置づけられる
- 令和8年(2026年)3月:試験の実施事業者を選ぶ企画競争(公募)が開始される
このように、制度は令和8年度(2026年度)の創設を目指して、検討会での議論を経て、実施体制づくりの段階に入っています。試験の運用は中小企業庁の委託事業として、選定された民間機関が担う形が想定されています。
本記事の前提|情報は流動的・「想定」段階であることに注意
重要な注意点として、2026年5月時点では、試験の詳細はまだ完全には確定していません。科目構成・問題数・合格基準・初回試験の日程・受験料などは、検討会資料や企画競争の募集要領で「想定」として示されている段階のものが多く含まれます。
以下で紹介する内容は、中小企業庁が公表した一次資料にもとづく現時点での想定です。情報源によって科目数の数え方などに差がある点も、正直にお伝えしながら解説します。
試験の内容|科目・形式・合格基準
就活生・受験検討者が最も気になる、試験の中身を見ていきます。
出題科目|M&A実務・財務・法務・倫理を横断する
試験は、M&A支援に必要な知識を横断的に問う構成が想定されています。中小企業庁が整理した「中小M&Aアドバイザーに求められる知識・スキルマップ」をもとに、試験科目(出題領域)は次の5つが想定されています。M&A実務の基礎知識から財務・法務の専門的な知識まで、幅広くカバーするのが特徴です。
| 出題領域 | 問われる知識の例 |
|---|---|
| M&A実務 | M&Aの進め方、スキーム、案件への対応、PMI(買収後統合)の基礎 |
| 財務・税務 | 会計処理、税務リスク、ストラクチャリングの基礎 |
| バリュエーション・DD | 企業価値評価の考え方、デューデリジェンスの実施 |
| 法務 | 民法・会社法・労働法、株式譲渡契約などの契約知識 |
| 倫理・行動規範 | 中小M&Aガイドライン、利益相反の管理、説明義務 |
なお、科目数は情報源によって「4科目」と「5科目」で表記が分かれています。これは「バリュエーション・DD」を独立した科目とするか、「財務・税務」に含めるかで数え方が変わるためです。いずれにせよ、M&A実務・財務・税務・バリュエーション・DD・法務・倫理という分野を幅広く学習する必要がある点は共通しています。M&Aのプロセス全体、交渉から成約に至るまでの現場の専門知識が、M&A実務を中心にひととおり問われると考えてよいでしょう。M&Aの手法には株式譲渡や事業譲渡などいくつかの種類があり、それぞれの手続きの違いも出題範囲に含まれます。
試験形式|CBT方式・50〜60問・約120分
試験形式は、次のように想定されています。
| 項目 | 想定される内容(2026年5月時点) |
|---|---|
| 試験方式 | CBT方式(テストセンターのコンピュータで受験)。全国で実施 |
| 出題形式 | 選択式・短答式 |
| 問題数 | 50〜60問程度 |
| 試験時間 | 約120分 |
| 実施回数 | 立ち上げ期は年3回程度。受験者はその中から1回を選んで受験するイメージ |
CBT方式は、簿記検定や宅地建物取引士試験などでも採用されている、コンピュータを使った受験方式です。全国の会場で受験でき、日程の自由度が高いのが特徴です。ただし初回の実施にあたっては、問題の流出や受験者間の不公平を防ぐため、通年の常時実施ではなく、年数回の試験日を設ける一斉開催に近い運用が想定されています。
合格基準|総得点率と科目別の最低基準
合格基準は、総得点の70〜80%程度が想定されています。加えて、特定の分野だけが極端に弱い有資格者を生まないよう、科目ごとに最低基準(足切り)を設ける方向で検討されています。
つまり、どれか1科目を捨てて他で得点を稼ぐ戦略は通用しにくく、M&A実務・財務・法務・倫理のすべてを一定レベルまで仕上げる必要がある、という設計思想です。難易度そのものは現時点で未確定ですが、「広く・バランスよく」が要件になると考えてよいでしょう。なお、合格率の目標水準や受験条件、受験費用、対策講座の受講料といった項目は、2026年5月時点では公表されていません。
倫理・行動規範が独立科目である意味
この試験で特徴的なのが、「倫理・行動規範」が独立した出題領域として大きな比重を占めることです。前述のとおり、制度創設の背景には不適切な仲介によるトラブルがあります。だからこそ、知識や能力だけでなく倫理観を試験で問う設計になっているのです。
倫理科目では、選んだ時点で不合格となる「禁忌肢」の設定も検討されているとされます。これは、医師国家試験などで用いられる仕組みで、「これだけは絶対にやってはいけない」という行動を選んだ受験者を合格させない、という強い規律付けの表れです。M&A支援者の顧客である経営者を守るための仕組み、と理解できます。
合格して終わりではない|合格者登録制度と継続的な規律
この制度のもうひとつの重要な特徴が、「合格して終わり」ではないという点です。試験に合格した後の登録制度が、制度の実効性を支えています。
合格者は氏名がデータベースで公表される
試験に合格した合格者は、登録の申請を行い、要件の審査を経て、氏名がデータベース化され公表される想定です。これにより、M&Aを検討する経営者が「依頼しようとしている担当者が、試験に合格した資格保有者かどうか」を確認できるようになります。資格取得が、担当者の知識と倫理を示す証明として機能する仕組みです。
定期講習・倫理規程遵守宣言が「登録の継続要件」
登録は一度行えば永久に有効、というものではありません。登録を維持するための継続要件として、次のような仕組みが想定されています。
- 倫理規程の遵守宣言:登録時および継続時に、倫理規程を守ることを宣言する
- 定期的な講習の受講:知識のアップデートのため、定期講習の受講を継続要件とする
- 知識の更新:法改正や実務動向の変化に対応できるよう、継続的な学習が求められる
この「合格後も学び続けることを求める」設計は、中小企業診断士や宅地建物取引士など、他の資格制度でも採用されている考え方です。M&Aの実務は法務・税務の改正に影響されるため、知識を最新に保つ仕組みが組み込まれているのです。
違反すれば登録取消|継続的に規律をかける仕組み
さらに、登録者が倫理規程に違反した場合は、登録を取り消し、その事実を公表する措置が検討されています。つまりこの制度は、「試験に通った人を増やす」だけでなく、登録後も継続的に規律をかけ、問題のある支援者を市場から退出させることまでを視野に入れた設計になっています。
M&A支援機関登録制度との関係|「組織 × 個人」の二層構造
新しい資格試験を理解するうえで欠かせないのが、すでに存在する「M&A支援機関登録制度」との関係です。
これまでは「組織単位」の登録制度だけだった
中小企業庁はすでに、M&A支援を行う事業者を対象とした「M&A支援機関登録制度」を運用しています。これは中小M&Aガイドラインの遵守などを宣言した機関を登録する制度で、2026年3月時点で約3,400者が登録しています。補助金の利用要件にもなっており、業界に一定の規律をもたらしてきました。
ただし、この登録制度は「組織・法人」を単位とするものでした。組織が登録していても、実際に経営者と向き合う担当者個人の知識・能力にはばらつきが残る、という限界があったのです。
新資格は「個人単位」で規律をかける
そこで新しい資格試験は、「個人」を単位として知識・実務能力・倫理を担保する役割を担います。組織レベルの「M&A支援機関登録制度」と、個人レベルの「資格試験」。この2つを組み合わせた二層構造で、市場全体の支援の質を底上げしようというのが、制度設計の基本的な考え方です。
| 比較項目 | M&A支援機関登録制度 | 中小M&A資格試験(新制度) |
|---|---|---|
| 対象の単位 | 組織・法人 | 個人 |
| 担保するもの | ガイドライン遵守などの体制 | 個人の知識・実務能力・倫理 |
| 登録数・規模 | 約3,400者(2026年3月時点) | 受験者は約1万人規模を想定 |
将来、ガイドラインや登録要件に組み込まれる可能性
現時点では、資格の取得は任意であり、無資格でM&A仲介の業務に従事することは引き続き可能です。しかし将来的には、重要事項の説明を有資格者が担当することを中小M&Aガイドラインに組み込む、といった形で、資格と実務をより強く連携させる方向も検討されています。資格制度が業界標準として定着していく可能性は十分にあると考えておくべきでしょう。
これは「国家資格」なのか|位置づけと制度の課題
報道では「新たな国家資格」と表現されることもありますが、ここは正確に理解しておきたいポイントです。
国家資格ではなく「公的検定」に近い位置づけ
一次資料にもとづく詳細な分析によれば、この資格試験は厳密な意味での「国家資格」ではなく、中小企業庁が関与する”公的な検定”に近い位置づけとされています。イメージとしては、簿記検定や販売士検定のような、民間ベースで運営される公的色の強い検定に近いものです。一部メディアが「国家資格」と報じることはありますが、本記事では一次資料の表現を尊重し、「公的な資格試験」として扱います。
つまり、公認会計士・税理士・弁護士・中小企業診断士のような国家資格とは性質が異なり、また日本M&Aアドバイザー協会のJMAA認定資格や金融財政事情研究会のM&Aシニアエキスパートといった民間資格とも異なる、その中間に位置する制度だと理解するのが正確です。
独占業務がない|制度の限界として指摘される点
制度の課題として専門家から指摘されているのが、「独占業務」がないという点です。宅地建物取引士(宅建士)には「重要事項説明は有資格者でなければできない」という独占業務がありますが、新しいM&A資格試験には、現時点でそうした法律上の独占業務が設けられていません。
そのため「合格者と無資格者の差が明確でなければ、単なる能力検討の問題集レベルにとどまるのではないか」という懸念も示されています。一方で、合格者の登録・公表や、ガイドラインとの連携強化によって、実質的な意味を持たせていく段階的な発展が想定されており、今後の制度の育ち方が注目されます。
専門士業(弁護士・税理士・公認会計士)との関係
新資格は、専門家である士業を代替するものではありません。M&Aの法務・税務には、弁護士・税理士・公認会計士といった国家資格者の独占業務に該当する論点が含まれます。たとえば法律事務は弁護士法、税務申告は税理士法で各士業の独占業務と定められており、不動産の登記手続きには司法書士、従業員の労務・人事面には社会保険労務士、資金計画にはファイナンシャルプランナー(FP)といった専門家が関わります。新資格の保有者は、そうした論点では必ず該当する士業と連携することが前提とされています。
逆に言えば、士業がこの新資格を取得すれば、自分の専門分野に加えてM&A支援の標準的な知識を備えていることを示せます。中小企業診断士をはじめとする士業にとって、ダブルライセンスとしての親和性が高い制度でもあります。
既存のM&A関連資格との違い|新資格の位置づけ
「では、これまでのM&A関連資格はどうなるのか」という疑問に答えます。
これまでのM&A関連資格の整理
これまでM&A業界には、業務に役立つ民間資格として、M&Aシニアエキスパート認定資格(金融財政事情研究会)、事業承継・M&Aエキスパート(金融業務2級)、JMAA認定M&Aアドバイザー(一般社団法人日本M&Aアドバイザー協会への入会と正会員としての所属、養成講座の受講が必要)、M&Aスペシャリスト資格、事業承継士などがありました。また公認会計士・税理士・弁護士・中小企業診断士(1次・2次試験を経て取得)などの国家資格者も、M&A支援で活躍しています。
これら既存の資格は、新制度の創設後もなくなるわけではなく、引き続きそれぞれの価値を持ち続けます。M&A業界を志望する就活生・転職者にとって「どの資格が役立つか」を整理した記事として、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーに資格は必要?取っておきたい資格を紹介で各資格を詳しく解説しています。本記事とあわせてご覧ください。
新しい「中小M&A資格試験」がこれら既存資格と決定的に違うのは、中小企業庁が主導する公的な制度であり、合格者の登録・公表と継続的な規律付けがセットになっている点です。個々の民間資格が「知識の習得」に主眼を置くのに対し、新制度は「市場の質の担保」という政策目的を持っている、という違いがあります。
中小企業診断士・税理士など士業は新資格を取るべきか
すでに士業として活動している方にとって、新資格を取得すべきかは「M&A支援を事業の柱にするかどうか」で判断が分かれます。事業承継・M&A支援に本格的に取り組むのであれば、新資格は自社・自身のM&A支援者としての実績と信頼を示す手段になり得ます。一方で、M&Aを主軸にしない場合は、無理に取得を急ぐ必要はないという見方もあります。
試験対策の方法としては、入門者向けの書籍での独学から、対策スクールや講座の修了、公式LINEなどを活用したオンライン学習サービスまで、今後さまざまな選択肢が登場すると見込まれます。M&AコンサルタントやM&Aコンサルティング会社が、士業や金融機関をパートナーとする協業の形も広がっていくでしょう。
信用金庫・信用組合のM&A担当者にも取得が促される
注目すべき動きとして、政府は信用金庫・信用組合などの地域金融機関のM&A担当者に対し、新資格の取得を促す方針とされています。地域金融機関は、後継者不在に悩む地元の中小企業を、融資取引を通じて早期に把握できる立場にあります。その担当者の知識水準を底上げすることで、売り手と譲受企業の双方が納得するM&Aの成功と実現を後押しし、地域の事業承継支援の質を高める狙いです。M&A仲介会社だけでなく、銀行・信金などの支援者全体に資格が広がっていく可能性を示す動きといえます。
資格制度の誕生はM&Aキャリアに何を意味するか|就活生・若手向け
ここからは、M&A業界を志望する就活生・若手転職者にとって、この資格制度の創設が何を意味するのかを考えます。競合の解説記事では語られない、キャリアラダーならではの視点です。
M&A業界の「プロフェッショナル化」が進む
これまでM&A仲介は「営業力があれば、知識は入社後に身につければよい」と語られることもありました。しかし資格制度の創設は、業界が「知識・実務・倫理を体系的に備えたプロフェッショナルの仕事」へと明確に舵を切ったことを意味します。
これは就活生にとって追い風です。「体育会系の営業職」というイメージで敬遠していた人にとっては、財務・法務・税務の知識を武器にできる専門職としての側面が強まります。M&A業界に求められる人材像が、スキルと専門性を備えた方向へ変わりつつあるのです。M&A業界の仕事内容を体系的に知りたい方は、M&Aアドバイザーの実務と役割もあわせてご覧ください。
就活生・未経験転職者は受験すべきか|現実的な考え方
結論から言うと、就活生が今すぐ受験を急ぐ必要はありません。制度は立ち上がったばかりで、初回試験の日程や受験要件(実務経験の要否など)も2026年5月時点では確定していません。まずは制度の動きを理解しておくことが大切です。
そのうえで、現実的な考え方は次のとおりです。
- 就活生:まずは制度の存在と背景を理解し、業界研究の知識として活用する。試験対策の学習(M&A実務・財務・法務の基礎)は、そのまま面接準備にもなる
- 未経験転職者:入社後に資格取得を目指す前提で、選考では「資格制度の動きを理解している」ことをアピール材料にする
- 入社後:M&A仲介会社の多くは、こうした資格の取得を推奨・支援する可能性が高い。講座や研修制度を活用して計画的に取得を目指す
いずれの場面でも、当面のメリットは資格そのものより「制度を正しく理解していること」にあります。M&A実務・財務・法務の基礎知識を早めに構築しておけば、それは他の就活生との差別化になり、入社後に資格取得という次のSTEPへ進む土台にもなります。
面接で「業界の最新動向」として語れる
M&A業界の面接では、「最近のM&A業界のニュースで関心のあるものは?」と問われることがよくあります。このとき、資格制度の創設を切り口に語れると、業界理解の深さが伝わります。
たとえば「M&A仲介はこれまで無資格でできる業務でしたが、不適切な仲介によるトラブルを背景に、中小企業庁が2026年度に資格試験を創設します。業界が支援の質と倫理を重視するプロフェッショナルな方向へ変わろうとしている点に魅力を感じています」——このように、背景・制度・自分の志望動機をつなげて語れれば、単にニュースを暗記しているだけの就活生とは差がつきます。面接対策を含めた業界研究の進め方は、【27/28卒】M&A新卒完全ガイドでも解説しています。
今後のスケジュールと未確定の論点
初回試験はいつか|2027年初頭を想定
2026年5月時点の情報では、初回試験は令和9年(2027年)の1〜2月頃に実施される想定が示されています。令和8年度(2026年度)中の実施を目指す形です。ただしこれは運営事業者の選定状況などによって変わり得るため、確定情報として受け取らないよう注意してください。
まだ未確定な項目
2026年5月時点で、次のような項目はまだ確定していません。
- 資格・試験の正式名称(「中小M&A資格試験」は仮称)
- 受験料・受験資格(実務経験の要否など)
- 科目数の最終的な区分、問題数・合格基準の確定値
- 初回試験の具体的な日程、既存資格者への免除措置の有無
最新情報は中小企業庁の発表で確認を
制度は今まさに形づくられている最中で、制度の方向性は令和8年度以降に具体化していく見通しです。試験は技術的にはCBT方式で導入され、同時に合格者の登録制度も運用が始まります。受験を具体的に検討する段階になったら、中小企業庁の公式サイトや、運営を担う事業者の発表など、一次情報を必ず確認してください。本記事も、重要な変更があれば更新していきます。
まとめ|M&A仲介の「資格制度」時代に備える
本記事では、2026年度に創設される「中小M&A資格試験」について、中小企業庁の一次資料をもとに解説しました。要点を整理します。
- M&A仲介はこれまで無資格でできる業務だったが、トラブル増加を背景に中小企業庁が令和8年度に資格試験を創設する
- 試験はCBT方式で、M&A実務・財務・税務・バリュエーション・DD・法務・倫理を横断的に問う(4〜5科目構成)
- 合格者は登録・公表され、定期講習や倫理規程遵守が継続要件。違反すれば登録取消
- 厳密には国家資格ではなく「公的な検定」に近い位置づけ。組織単位のM&A支援機関登録制度との二層構造で市場の質を担保する
- 就活生は受験を急ぐ必要はないが、制度の背景を理解しておくことが業界研究・面接対策に直結する
資格制度の創設は、M&A仲介という仕事が「知識・実務・倫理を備えたプロフェッショナルの仕事」へと進化していくことの象徴です。この変化を正しく理解しておくことは、M&A業界を志望するうえで大きなアドバンテージになります。
中小M&A資格試験に関するよくある質問(FAQ)
中小M&A資格試験は国家資格ですか?
厳密な意味での国家資格ではありません。中小企業庁が関与する公的な資格試験で、簿記検定などに近い「公的な検定」と理解するのが正確です。報道では「国家資格」と表現されることもありますが、一次資料ベースの分析では公的検定に近い位置づけとされています。
受験に実務経験は必要ですか?
2026年5月時点で、受験資格(実務経験の要否など)は確定していません。今後の中小企業庁の発表で明らかになる見込みです。
就活生でも受験できますか?
受験資格が未確定のため、現時点では断定できません。ただし就活生は受験を急ぐ必要はなく、まずは制度の背景と概要を業界研究の知識として理解しておくことをおすすめします。試験範囲であるM&A実務・財務・法務の学習は、そのまま面接準備にも役立ちます。
M&A仲介で働くのに、この資格は必須になりますか?
2026年5月時点では、資格取得は任意で、無資格でもM&A仲介の業務に従事できます。ただし将来的に、重要事項の説明を有資格者が担当する形でガイドラインに組み込まれるなど、実務との連携が強まる可能性は指摘されています。
既存のM&Aエキスパート資格などはどうなりますか?
M&AシニアエキスパートやJMAA認定M&Aアドバイザーなどの既存資格は、新制度の創設後もなくなりません。それぞれ独自の価値を持ち続けます。既存のM&A関連資格の詳細は、M&A業界で役立つ資格を紹介した記事で解説しています。
参考リンク・出典
本記事は、中小企業庁が公表した以下の一次資料をもとに作成しています。制度は検討・準備の段階にあるため、受験を具体的に検討する際は各公式ページで最新情報をご確認ください。
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/m_and_a_guideline.html
- 中小企業庁「中小M&A資格試験実施事業」企画競争の募集(令和8年3月):https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/itaku/kobo/2026/260327001.html
- 中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(中小M&A市場の改革に向けた検討会 資料):https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/ma_shijou/004/002.pdf
M&A業界への就職・転職ならキャリアラダーへ
弊社キャリアラダーは、M&A仲介・M&Aアドバイザリー業界への就職・転職に特化した支援を行っています。資格制度の創設をはじめ、M&A業界は大きな変化の時期を迎えています。M&A業界を目指すなら、当社のような業界特化のエージェントを相談先に選ぶことで、最新動向を踏まえた選考対策ができます。業界研究のサポートからES添削・面接対策まで、経験豊富な専門アドバイザーが一気通貫で対応します。
「M&A業界に興味があるが、何から準備すればいいか分からない」という方は、お気軽に無料キャリア相談をご利用ください。あわせてM&A業界で役立つ資格一覧、【27/28卒】M&A新卒完全ガイド、M&Aアドバイザーの実務と役割もご覧いただくと、業界理解が一段と深まります。
学歴・ガクチカ・業界理解・志望動機を入れるだけ。AIが内定可能性スコアと“あと何が足りないか”を現場基準で診断します。登録不要・3分。
▶ 無料で診断する